「自分が本当に何をしたいのかわからないんです」
年間8,000名以上のキャリア・メンタル相談を受けている中で、これは間違いなくトップ3に入る相談です。
就活生、若手社会人、30代でキャリアに行き詰まった人——立場は違っても、驚くほど同じ言葉が出てきます。
「やりたいことは、じっくり考えれば見つかるはず」この前提そのものが間違っています。
脳は、自分が経験していないことに対して明確な欲求を作ることができません。これは希望や夢の話ではなく、脳の情報処理の仕組みとしてそうなっている、という話です。
たとえば、一度も食べたことのない料理を「あれが食べたい!」と切望することはないですよね。キャリアも全く同じです。やったことのない仕事、触れたことのない世界に対して、「これだ!」という確信が湧くことは——脳の構造上——あり得ません。
にもかかわらず、多くの人が「じっくり考えれば天職が見つかるはず」と信じて、自己分析ノートを書き、診断テストを受け、キャリア本を読み漁ります。
実はこれ、脳の巧妙なトリックなのです。
「考えている間」は、脳にとって安全な状態です。未知の行動を取るリスクを冒さなくて済む。失敗しなくて済む。傷つかなくて済む。つまり**「自分探し」は、無意識レベルでは現状維持のための最も優秀な言い訳**として機能しています。本人は真剣に悩んでいるのに、脳は全力で「動かない理由」を生産している——この構造に気づいていない人がほとんどです。
私は東京大学の薬学系研究科で、脳の記憶形成、特に海馬や歯状回と呼ばれる領域の働きを研究していました。
ここで重要なのは、海馬は「入力」がなければ動かないということ。
新しい体験、新しい行動、新しい環境、こうした「外からの入力」があって初めて、脳の中に新しい回路が作られ、新しい選択肢が生まれます。
「考えているのに答えが出ない」のは、あなたの思考力の問題ではありません。脳に新しい材料が入っていないから、新しい答えが出しようがないだけです。
コロンビア大学で臨床心理を研究していた時、まさにこのパターンを数多く目の当たりにしました。
「自分がわからない」と何年もカウンセリングやセラピーに通い続ける人と、たった数ヶ月で大きく変わっていく人。
変わる人は、完璧な答えが出る前に小さな行動を起こしていました。不完全なまま動いて、そこで得た経験をもとに次の判断をする。
一方、変わらない人は「まず自分を理解してから動こう」としていました。気持ちはわかります。でもそれは、泳ぎ方を完璧にマスターしてからプールに入ろうとしているようなものです。水に入らなければ、泳ぎは永遠にわからない。
「やりたいこと探し」は、今日で終わりにしてください。
代わりにやることはシンプルです。
「少しでも気になったことを、72時間以内にやる」
このルールを、自分に課してください。
説明会に申し込む。気になる人のSNSやLinkedinにDMを送る。未経験の仕事に応募してみる。友人に「最近面白い仕事ある?」と聞いてみるなんでもいいのです。
重要なのは、行動の「質」ではありません。「やったことがない行動を脳に入力すること自体」が目的です。
やってみて「これは違うな」と思ったら、それは失敗ではありません。
「やりたいこと」は、こうした大量の小さな行動の中から、脳が勝手に見つけてきます。
考えるのは、動いた後でいい。
ここまで読んで、「それはわかるんだけど、それでも動けないんです。何したらいいの?」と思った方もいるかもしれません。
その感覚は、正しいです。
「動けばいいとわかっているのに動けない」
頭では「動きたい」と思っていても、無意識が「でも失敗したら?」「でもまだ準備が足りないのでは?」「自分にはどうせ無理だ」と囁き続ける。この声は、自分では制御できません。
厄介なのは、この無意識のパターンは自分一人では見えないということです。自分の思考で自分の無意識を観察することは、構造的にほぼ不可能です。だからこそ「わかっているのに変われない」が何年も続く。
パターンを特定し、書き換えるには、脳と無意識の仕組みを理解した上で、外側から客観的に見てくれる存在が必要です。
8,000名以上の相談を通じて確信しているのは、「正しい知識」だけでは人は変われないということ。知識を、あなた自身の無意識のパターンに合わせてカスタマイズし、行動に変換するプロセスが必要です。
Mental Lab|脳科学メンタルプログラム
脳科学と臨床心理学をベースに、あなたの無意識のパターンを特定し、行動を変えるための1ヶ月集中プログラム。
「考えすぎて動けない」を終わらせたい方は、プログラム詳細をご覧ください。
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坂下絵美(さかした えみ)
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