誰しも我が子をあえて悪い状態にしようと思って干渉しているわけではないと思います。しかし、自分のしている干渉は過度になっているのか、もしくは自分の受けている干渉は過剰なのか、といったことを自分で判断することは難しいものです。どのような行動が過干渉に当たるのか、また逆にどう接すると良いのかにチェックリストとともに見ていきたいと思います。これからの接し方のヒントになれば幸いです。
過干渉の意味と過保護との違い
過干渉とは、読んで字のごとく干渉し過ぎること、一般的な限度を越えて干渉することを意味します。特に親子関係について、親が過剰に子どもの行動を制限したり先回りしすぎて自分で何もさせないといった状態を指します。常に監視して先回りして指示することからアメリカではヘリコプターペアレントと呼ばれています。
また、字面が似ている過保護と混同されることがありますが、こちらは親が子どもの要求を叶え過ぎたり、本当はやるべきなのに子どもが嫌がることを全て遠ざけている状態を指します。行き過ぎてしまい本質的に子どものためにならないという点では共通していますが、過干渉は子どもの意に反して行動を変える点で異なります。
過干渉な行動とは?
どういった行動が過干渉にあたるのでしょうか?メリーワシントン大学の研究によると、過干渉な親を持つ大学生ほど抑うつ状態が高く人生の満足度が低いことがわかりました。この研究の中で用いられた行動リストをご紹介します。いくつあてはまれば必ず過干渉というものではありませんが、心当たりが多いほどより過干渉であると考えられます。
1. 学校選びについて口を出していた/出すつもりだった
2. 運動スケジュールを監視している
3. 実家にいるときは門限がある
4. 定期的に電話やメールで居場所を知らせてほしいと思っている
5. 学校で子どもが不当だと思うような低い評価を受けた場合、学校に電話する
6. 何を食べたか逐一把握している
7. 誰と一緒に過ごすかを全て知っている
8. 学校での様子を把握するために電話をかけてくる
9. 子ども友達と問題を抱えていると仲裁に入ろうとする
子どもに決定させない・選んだものを尊重しなかったり、学校選びや交友関係まで干渉しようとすることは悪影響を及ぼすようです。また、後片付けや宿題などでも場合によっては「親がやったほうが楽だから」という理由で子どもがやるまえに先回りして済ませてしまう場合もあるようです。確かに目の前の問題はより早く解決するかもしれませんが、結果として子どもの課題解決能力の発達機会を逃しているのではないでしょうか。
過干渉の親を持つ子どもの特徴は?
北京師範大学にて13の中学校の55のクラスから1255人の生徒を調査したところ、過剰に親が干渉していた子どもは自尊心と自己効力感の低下により結果としてリーダーシップ能力に悪影響がありました[4]。また、フロリダ州立大学の研究では、大学生461人に対して親の行動と現在の抑うつ・不安の程度と人生の満足度の関係について調査しました。結果、過干渉に育てられた場合、自己効力感の低下を介して抑うつ・不安状態がより高く、人生の満足度がより低いことが見られました[5]。子ども時代に悪影響があるだけでなく、成人して家を出てからも過去に過干渉を受けたことによる影響が残ることがわかります。
親はどうすればいい?
ではどのように干渉するのが適切なのでしょうか?もちろん唯一の正解があるわけではありませんが、ヒントになる事実を紹介したいと思います。
自立支援型の干渉
以下は過干渉と対極に位置する自立支援型の親の行動リストです。
1. 学校で起きた問題を先生に相談するように勧めてくれる
2. (実家を出ている子どもに)食生活で節約するヒントを教えてくれる
3. 自分で決断し、自分の選択に責任を持つように勧めている
4. 友人との間の人間関係の問題は、自分で解決するように勧めている
5. 予算を立てて自分の経済を管理するように勧めている
6. 自分で進路を選択することを勧めている
自立支援型の親は子どもの自己決定を支援するような接し方をすることが見て取れます。上記で紹介したフロリダ州立大学の研究では、自立支援型の親をもつ大学生は自己効力感が高く、抑うつ・不安状態の程度がより低く人生の満足感がより高いことがわかりました。従って、全く干渉しなければ良いわけではなく、自分で考え自分で決断するよう促すことが重要そうです。また、決断のヒントになる情報の提供や、答えを求めてきたときでも自分で考えるよう促すことが特徴的です。
子どもはどうすればいい?
親が上記のリストに当てはまった子ども側はどうしたらよいでしょうか?まずは親に過干渉であることを認識してもらい、やめてもらうことが必要です。しかし、自分の行動を客観的かつ正確に認識することは実は大変むずかしいことです。もし自分たちだけでは堂々巡りになってしまう場合はテキストベースで冷静に論理的に事実に基づいて対話するよう試みたり、第三者に介入してもらい対話するといったことが必要かもしれません。
それでも難しければ、一旦は逃げることも手です。しかし、もしかしたらこれまで育ててくれた恩があるから今更家を出る・連絡を減らすことに抵抗があるかもしれません。ただそれは感謝の罠という認知の歪みかもしれません。感謝することと悪影響を受ける続け我慢することは必ずしもイコールではありません。感謝・恩返ししつつも距離を取ることも可能ではないでしょうか?
また、行き過ぎた干渉をしている親の側も、子どもと自分を同一視するなどの認知の歪みを持っている可能性もあります。このような思考の癖を認識することが第一歩ですが、他にどのような癖があるかについてはこちらを参照して下さい。
Mental Lab | 認知の歪みとは?全15種の自動思考チェックリストと治し方
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1: 東京大学社会科学研究所・ベネッセ教育総合研究所共同研究「子どもの生活と学びに関する親子調査2020」
3: WHO | Adolescent mental health
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